テキストサイト関連文章11 〜面白いサイトを作るには?〜

面白いサイトを作るには
これは『ろじっくぱらだいす』の文章。(1)〜(3)まである。例によって私のほうでピックアップするが、ぜひとも原文を読んで欲しい。この文は前から知っていたが今回改めて読んでみて、綺麗にまとめられた、実によくできている文だと思った。「ブログでよく見かける無駄に長い文章」になっておらず、かつ抑えるべきポイントはしっかり抑えている。
 
ピックアップ
■個人サイトの構成要素・必要技術として【発想】【収集】【加工】【配信】の4つに着目する
発想:コンテンツの元になるネタを創造する能力
収集:コンテンツの元となる情報を収集する能力
加工:ネタや情報を、Web上で表現できる形に加工する能力。文章・デザイン・CGなどの一般的技術から、サイトのコンセプトにデザインを合わせるなど、そのサイト独自の技術も含む
配信:出来あがったコンテンツを閲覧者に見てもらう能力
 
■第1段階
・【発想】と【収集】を行うことで、コンテンツの種が出来あがる。ネタ日記・短文ネタなどは【発想】が重視され、ニュース系・批評系は【収集】が主になる。また、普通の日記は【発想】【収集】を飛ばして、第2段階の【加工】へ直接進むこともありえる。
 
■第2段階
・コンテンツの種を加工し具現化することで、実際に閲覧者に見てもらうコンテンツが出来上がる。
 
■第3段階
・第3段階では、第2段階を経て出来あがったコンテンツをサイトにアップロードすることで、閲覧者に見てもらうことになる。アクセス数が他と比べて多いサイト、俗に言う「大手サイト」は配信力が強いということになる。
 
■2002年、人気サイト「侍魂」の手法を模倣した「侍魂系フォント弄りサイト」が大発生し、Web上で話題となった。
■「侍魂系フォント弄り」とは、黒背景・文章センタリング・フォント拡大&色付けの3つを柱とした加工技術。
■「侍魂系フォント弄り」は見た目のインパクトがあり、かつ習得・実現するのが容易であったため、あっという間に普及した。
■「侍魂系フォント弄りサイト」は、どのサイトも元ネタは日記、加工は【侍魂系加工】だったため、閲覧者にとって出来上がるコンテンツがどのサイトもすべて同じに見えた。
■このため閲覧者は飽きてしまい、またインパクトの強さが悪目にでて「背景が黒文字でセンタリングだと、アクセスした瞬間ブラウザを閉じてしまう」という事象が発生した。その外の要因も重なり合い、結果として侍魂系フォント弄りサイトは衰退したと考えられる。
■自サイトのアクセス数を上げることを命題とした「アクセス至上主義」という考えがあった。大手サイトになるために「2chへの書き込み」「ネットバトルをする」などのテクニックも紹介していたが、閲覧者や他サイトの共感を得られず嫌われた。
■サイトのアクセス数とは管理者ではなく閲覧者に依存する。そのサイトが大手かどうかは閲覧者によって決まることであり、従って、「俺は大手サイトになる!」という言い方は厳密には間違い。
■アクセス至上主義者の問題は、配信における矢印の向きを逆に捉えていたこと。「どんなにいいコンテンツを作っても、宣伝しなければ見てもらえない」と思い込み、宣伝活動に勤しんでしまった。また宣伝に夢中になるあまり、コンテンツの充実へ注力しなかったことも衰退した要因の1つと考えられる。
■閲覧者の基本的な性質として、自分から見に行くコンテンツには好印象をもつが、強制的に見せられたコンテンツには不快感を覚える。磁石は好かれますが、スピーカーは嫌われる。
■アクセス至上主義者はスピーカーとなるための技術を「アクセスアップ技術」として公開し、他サイトを巻き込んでそれを実行したため急速に嫌われていった。
■俗に言う「侍魂前」「侍魂後」のサイトの違いは、「サイトを運営する喜びを見出す場所の違い」だと思う。
■かつて自分の文章を公に見てもらうためには、才能を出版社に認められるか自費出版するか、ぐらいしか手段がなかった。ところがインターネットの普及により、ちょっとしたタグの知識とプロバイダ代さえ払えば、どのような人でも自分の作品を全世界に配信することができるようになった。初期の個人サイト管理人はその喜びに打ち震え、自らの創作欲を惜しむことなくネットへと費やした。
■昔のサイトは、インターネットを作品公開の場と捉え、コンテンツを作るまでのプロセス、すなわち【発想】【収集】【加工】の作業こそがサイト運営の楽しみだった。逆に【配信】に対する情熱はそれほどなかった。理由として以下があげられる。
 (1)個人サイトの黎明期のため閲覧者全体の数が少なかった。
 (2)2chなど、閲覧者が共有する巨大空間が存在しなかった。
 (3)【配信】に対する方法論が少なかった(存在しなかった)。
■ところが現在。インターネットに「人と人とが交流する場所」という、新しい価値が見出された。個人で情報を発信できるインターネットなど存在して当たり前となり、また個人サイトの増加により各種技術が成熟しはじめたことに伴い、サイト管理人の喜びは【発想】【収集】【加工】だけではなく【配信】へも向けられた。コンテンツを作るよりも、コンテンツを見てもらう・宣伝するほうに喜びを感じる管理人が増えてきた。
■彼らにとって【配信】こそがサイト運営の楽しみであり、コンテンツ製作のプロセスにはさほど興味を示さない。コンテンツは無かろうがコピーだろうが構わない。【発想】【収集】【加工】技術などは他サイトのを真似して使う。
■【配信】を重視するサイトは、他のサイトに比べて以下のような性質がある。
 (1)自サイトの宣伝を好む(他サイトの掲示板、2ch)
 (2)他人の意見を非常に気にする(他人の意見=サイトを見てもらっている人=【配信】の結果)
 (3)批評批判を自ら好んで受けるが、頂いた意見に反発し、コンテンツを修正しようとは思わない(批評批判は一種の宣伝だが、コンテンツを直すことは宣伝ではない)
■インターネットとは、個々のサイト管理人が作ったコンテンツが幾重にも繋がり合って「インターネット」を形成している。だからこそコンテンツに多様性があり面白い。
■コンテンツ製作の軽視・技法やコンテンツそのもののコピーを容認すると、個人サイト全体が画一化され面白みがなくなってしまう。
■「面白いサイト」には二つの捉え方がある。
 (1)サイトのコンテンツが面白い
 (2)サイト管理人の挙動が面白い
■コンテンツを作るには、第1段階(発想・収集)と第2段階(加工)を行う必要があります。この2つの段階のうちどちらかにおいて、ずば抜けて高い技術があれば、出来上がったコンテンツは面白いものになる。だが、それを出来る人は多くない。そこで提案したいのは、どちらかの段階において他サイトと区別化を計ること。
■一例としてニュース系サイトを考える。ある有名ニュースサイトAを見て、あなたもニュースサイトを立ち上げようとしたとき、10〜20のサイトから情報を集めて、デザインや語り口はサイトAを参考にしてコンテンツ作成。……これでは面白いコンテンツにはならない。
■一日に300〜400ものサイトを巡回する有名ニュースサイトAと同じ方法で【収集】を行い、同じ【加工】をしたところで、そのサイトより面白いコンテンツにはならない。「物マネ」「劣化コピー」と評されるのがオチ。だから有名サイトAのコンテンツと区別化を計らねばならない。
■区別化の例として【収集】【加工】のうちの【収集】を区別化する方法を考えてみる。
 (1)情報を収集するサイトを増やす(力勝負)…情報収集するサイトの数を増やす。今回の例では難しい。
 (2)扱う情報を絞る(専門化)…有名サイトAがゲーム全般のニュースを扱うならば、こちらはエロゲー・同人・ホモゲーなどに専念して情報を収集する。
 (3)異なる種類の情報を扱う(他分野への進出)…有名サイトAがゲームを扱うならば、ゲームとはまったく異なる情報を扱う。
■区別化を行うことにより、サイトAのコンテンツに対して「上下」で比べられることはなく、「左右」の対等な関係で閲覧者に見てもらえるようになるし、「劣化コピー」扱いされる危険が減る。
■面白いサイトを作るには以下の2点であると考える。
 (1)【収集】【発想】【加工】のいずれかにおいて卓越した技術をもつ。
 (2)でなければ他サイトとの区別化を計る。