テキストサイト関連文章4 〜お父さんのためのテキストサイト講座〜

お父さんのためのテキストサイト講座


これは『鞠棚』の文章。「お父さんのためのテキストサイト講座」という題を見ると「初心者向けにテキストサイト界全体を語っている」と思いがちだが、実際はテキストサイト界のなかでも「『ReadMe!』周り」に偏っていると思われる。この文章が「『ReadMe!』周り」な文章になった原因は、私の推測ではあるが、書き始めた時期が「2002年1月」であるためか。つまり「アクセス数至上主義」に関する議論が活発だった時期に書きはじめたため、その影響を受けている。


ピックアップ
■『ReadMe!』によってランキング上位、下位による「権威」の差が生まれ、「身分の差」が生まれた。
■『ReadMe!』で「上位に入る」ためには宣伝や、他サイトとの繋がりが必要。その最も効果的な方法として大手サイトに紹介してもらうというものがあり、結果、大手サイトを軸とした様々な「派閥」が生まれた。
■「派閥」が生まれると、その間の争い(=ネットバトル)が生まれる。「アクセス数」が欲しい人間にとってネットバトルは有効な宣伝手段だ。
ネットバトルは「アクセス数」を稼ぐには有効な宣伝手段ではあるが、テキストサイトとしての本意である「面白いテキストを書く」ことから外れている。すなわち、「ランキング」が「面白さ」を示す、絶対的な値ではなくなった。
■そのような流れから、「中堅」や「弱小」の中から、面白いサイトを発掘しようと試みる「ための」、非常に公共性の高いサイトなども生まれた。またサイト作者向けの「テキストサイト論」が多数書かれたり、「サイト批評」を行うサイトが現れた。
■(2002年1月)現在「テキストサイト社会での地位」を築くためには、「現実社会での地位」がほとんど必要無い。
■『ReadMe!』登録サイトが更新頻度が高いのは、『ReadMe!』のアクセス数ランキングが、「日刊」の単位で行われるため『ReadMe!』周辺サイトではこの「毎日更新」が広まっており、更新を持続しなければサイトは評価されない。このように時間の流れが速いため、よく「テキストサイトはナマモノである」といわれる。
テキストサイトの多くはなるべく高い更新頻度を保つために「日記」を書くが、「日記」というコンテンツで旧来の意味の「日記」を書いているサイトは流行らない。テキストサイト社会で通用する「日記」は、「その日あったこと」ではなく「その日思いついたこと」を書いたもの。
■「自己顕示欲」がリドミのランキングを白熱させ、日々面白いテキストを生み出している。
先行者現象はテキストサイト社会の人口そのものを急激に肥大させ、また、第2の侍魂を目指したテキストサイトが多数作られ、その数がテキストサイト社会全体の中で大きなウェイトを占めるようになった。このような事を踏まえてテキストサイトを語るときはよく「先行者以前」「先行者以降」というような分類がなされた。
■『侍魂』は「面白いテキストを書いた」結果、「大手サイトに紹介」されて、アクセスを一気に増やした。そして侍魂以降、幾つかのサイトは、このサクセスストーリーをなぞること、すなわちアクセスを増やすこと自体を目的とした。
■この類のサイトの多くが本来の読者への配慮を欠いたため、(2002年2月)現在は「アクセス至上主義」という言葉自体が、時として人気が先行して面白く無いサイトへの皮肉の意味合いを含んでいる。
■「フォントいじり」を形式だけ真似て、あまり面白くないテキストが蔓延したため、読者層からは「フォントいじり」は読みにくいと非難され、「フォントいじり」を用いただけで「面白くない」と嫌悪する考え方が生まれた。
テキストサイトにおけるニュースサイトとは、様々な企業ニュースサイト又はテキストサイトの記事をピックアップして紹介するサイトのこと。
■ニュースサイトという形式は、『ReadMe!』上位に入るためには極めて効果的なスタイルであると言える。「情報」としての価値があるため読者の需要が多い、またリドミ社会での武器である「更新頻度」を保つためのネタがなくなる心配が無い。ニュースサイトという形式は、この2つの特性を兼ね備えているため。
■『侍魂』の健さんや『ろじぱら』のワタナベさんは「キャラ立て」に成功している。
■『斬鉄剣』のような思想系テキストではサイト上の管理人の「キャラ」「人間性」が前面に出ることが多いので、それに賛同できるかどうかで読者にとっては好き嫌いが別れやすい。
■「文中リンク」という要素は、サイトバトルにおいて非常に大きな意味を持つ。相手サイトへリンクすることで、それまでの自サイトに賛同する読者に送り込み、「数」によって敵サイトを攻めることができる。
■信者を抱えるような大手思想系サイトになるほど、サイトバトルにとって有利であり、『G∽FORCE』と『斬鉄剣』のサイトバトルに関してはサイトの規模の差がその結末に大きな影響を与えた。
■『斬鉄剣』『G∽FORCE』『無題』が嫌いだ。
テキストサイト論が多数生まれる理由は2点
1.テキストサイトが現在、成熟した社会へと発展する中途の段階なために、その定義を模索している状態であるということ。
2.テキストサイトの読者はサイトの管理人が多いため、読者が「テキストサイト論」に興味を持っているという状況がある。
テキストサイト言及をやれば、多くの読者の興味を惹く=多くのアクセスを得られる、ということが起こるので、これを逆転して考えると、多くのアクセスを得るために、サイト言及を行う、という現象が起こりうる
■読者が効率的に「面白いテキスト」を見つけるためのナビゲートをするページの需要が生まれた。この役割を担うためにおすすめテキストを紹介すること自体を1つのメインとしたサイトが幾つかある。『このテキストサイトがすごい!』『HEY BULLDOG』『YARUU!JAPAN』など。
■「サイト批評サイト」は、全て数ヶ月程度の短期間で閉鎖している。閉鎖に至る大きな理由として、サイトの性質上、常に他のサイトへの言及を行うために、サイトバトルが起こりやすいため。
■「面白さ」という概念は個人個人によってその基準が大きく違います。過去に閉鎖した批評サイトは大半が個人の手によるものであるため、その評者と面白さの基準が違うと読者は納得ができない、という問題が度々発生し、バトルの原因となった。このような状況に対して『このテキストサイトがすごい!』が用いている手法が、多人数による合議形式。また、管理人のキャラ立てを殆ど行わず、むしろ中立的な立場であろうとしている点も、このサイトの特徴。
テキストサイト社会において「アクセス数」というものが1つの大きな権威となり得るものであるため、不容易にそれを個人に委ねることは危険。
■『2ch』の影響力、というのは当然、個人テキストサイトにも及ぶ。テキスレなどでサイトの管理人に否定的な書きこみが続くことが原因となって、そのサイトが閉鎖に追いやられることも少なくない。

テキストサイト社会は、アクセス数の序列による、発言力の差はありますが、現在のところ、そしておそらくは今後も「絶対的な権威」が存在することは無いでしょう。そのような混沌の中で、最大級の力を持っている機関の1つが2chです。集まる人の数において他サイトを圧倒する2chは、ネット社会における、一種の「大衆」「世論」とも呼べる存在です。この構造を、現実社会と比較してみます。果して昨今の社会において、世論がどれほどトップに影響を与えることができるでしょう? それに比べて、現在のネット社会は、真の意味での民主主義に、一歩近づいているといえるのではないでしょうか。僕はこの点に関して、ネット社会の方が、現実社会よりも、洗練されているのではないかと考えています。

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