『侍魂』のフォント弄りについて 〜模倣サイト達は「間の取り方」を真似できなかった〜
『侍魂』は2001年3月に先行者ネタで有名になった。その『侍魂』の文には幾つかの特徴があった。
1.フォント弄り
2.黒背景
3.センタリング
4.改行
1と2は『A_PROMPT.』のABC文法(ABC文調)であり、侍魂オリジナルではない。侍魂が侍魂たる所以は3と4の使い方にある。
「1&2&3」は強弱をつけ、「4」は間を表現する。強弱と間はお笑いでは重要であり、お笑いの技法を文章で生かすにはどうしたらよいかという問いの答えがこの4つの方法。テキストサイトブームから8年経った今振り返って考えても、じつに理にかなった技法だなあと感心する。
特徴的だったのは4の改行。健さんはこう語っている。
IW:「侍魂」のテキストは、独特な文体です。一般的に、してはいけないと言われる無駄な改行などが、さらに笑いを増幅していると思いますが?
エッケ・ホモ! これがメガヒット級の個人サイトだ
健:「アンチ侍魂」を掲げる人などに叩かれることはあります。でも、伝統的なテキストオンリーのページは、伝えたいことがたくさんあって、論理的にきっちり構成できる文章には向いていると思いますが、侍魂のように「ぱっと見て気軽に笑える」文章を書くためには、演出は必要だと思います。改行で間をあけるやり方は、まさに会話における間の取り方と同じ。ネタの文章は完成していても、この「間」の計算に時間がかかってしまいます。
「間」。多くの侍魂模倣サイトが模倣しきれなかった結果、クズサイトと言われた。模倣サイトが模倣しきれなかったのはこの「間の取り方」なんだと思う。改行するのは簡単だが、どこで改行を入れたらよいか。何行入れるのか。
振り返ってみてかつての漫才ブーム。「B&B」「ツービート」「紳助・竜介」。彼らは16ビート漫才といわれた。今までの漫才の形を変えようとし、「間」の数を減らしてテンポアップした漫才。そしてその後に出てきたダウンタウン。ダウンタウンは16ビート漫才やその前のやすきよよりもっと遅いテンポの漫才だった。テンポをずらして間を外す。キーワードは「間」なのだ。
先の健さん発言にあった「ネタの文章は完成していても、この「間」の計算に時間がかかる」。しゃべりではなく文章であるのに「間」の計算をしている。これこそが健さんの凄いところだと思う。そして多くの模倣サイトはABC文法とかセンタリングとか改行とかというカタチだけは真似できても、この「間の取り方」を真似出来なかった。「間の取り方」はセンスの問題だから。
だから模倣サイト達は見かけが侍魂であっても、面白くはなかったのだ。そんなことを考えた。